最近多発の86&BRZ FA20エンジンのメタル不良

86やBRZは結構な頻度で入庫して頂くのですが

エンジンを切った直後やかけた瞬間に

「タンタン・・・」

と言う音を聞くことが良くあります。

 

オーナーに報告すると

「少し前から鳴るようになって

 気にはなっているのですが、まあ普通に走るし・・・」

と言う返答がほとんどです。

 

異音の発生部位にも寄りますが

エンジンの真ん中辺りから音が出ていたら

大体はメタルが潰れかけていますね。

 

今回入庫してエンジンを降ろす事になった

こちらの86は、当初は

「タンタンタンタン」

と言う音でしたが、最終的には

こんな感じの大音量になってしまい、エンジン分解へ。

 

例のバルブスプリング交換のリコール作業後と言う事もあり

エンジンを単体にした後で

リコール作業を行ったディーラーさん立ち合いのもと

タイミングチェーンを確認し

その後、バルブスプリングやリテーナー、コッター等まで確認しましたが

何かをミスっていると言う事はありませんでした。

ただ、Oリングを入れるのが苦手なメカニックらしく

大小数か所でOリングが噛み込んでいました・・・。

 

さて、大音量の原因ですが

3番のコンロッドでした。

 

分解して見ると

3番のコンロッドメタルが上下抱き着いてしまっていました。

この為コンロッド大端部に大きなクリアランスが発生してしまい

異音を発生させながら、メタル無しで回っていたので

クランクのジャーナル部分も

コンロッドののジャーナル部分もお亡くなりになっています。

 

ここでちょっと、FA20のメタルの話になりますが

FA20をこれまで何機分解組み付けしたのかは忘れましたが

その際、結構な勢いでメタルに傷が入っていることがほとんどなんです。

 

純正メタルに追加表面処理などを行って見た事もありますが

結果から言うと大差なし・・・。

 

結論から言うと、このエンジンに対して組み付けられているメタルが弱すぎるんだと思います。

S/Cやターボを付けているならまだしも

今回の車両は基本的には吸排気すら交換されていない、ノーマル車両です。

 

そこでアフターパーツとしてのメタルを探して見るのですが

国内ではどのメーカーからも出ていません。

なので、当店ではFA20を組む際は海外から強化メタルを取り寄せて

リビルトする様にしています。

 

あっ、必死に時間をかけてようやく探し出したメタルなので

電話等で

「どこのメタルか教えてくれ」

と言われても、お答えできませんのであしからず。

 

最近多いんですよ、この手の電話・・・。

何十時間も・・・下手したら数か月単位で調べて検証した結果を

電話一本で知ろうとする人たちが居ます。

っで、断るとしつこく聞いてくるので

こっちもイラっとしながら話を聴いて電話を切ると

あとでGoogle等の評価ページから

「社長に上から目線で話をされた。」

とか

「思っていたより、知識は浅い。」

との事。

あなたに教える知識は持ち合わせておりません。

少々、話がズレました・・・。

 

メタルの件もFA20の弱点なのですが、初期型のアプライドAエンジンでは

ピストンリングの合口位置合わせズレも多いです。

このエンジンもトップリングとセカンドリングの合口がほぼ同じ位置に来てしまっていました。

オーナー曰く

「エンジンオイルの消費が早い」

とも言っていたので、原因はここでしょうね。

ここまで合口が接近していると圧縮も落ちていたと思います。

 

この部分に関してはリコール作業とは関係ない部分なので

ラインオフされた時点である程度同じ様な位置にいたのではないかと思われます。

まだ作業者が作業手順に慣れていなかったのかな・・・。

 

そして、今回のようにオイル消費が激しくなってくると

エンジンオイル交換の際に規定量よりも多めに入れたくなるのが一般的ですが・・・

それをやってしまうと、オイル過多によるオイルハンマー現象を起こします。

 

実は今回のエンジン、入庫時にオイルがやたらと多く入っていました。

なぜそこまで多くのオイルが入っていたのかの経緯は省きますが

抜いたオイルを合わせると全部で7L超でした。

 

レベルゲージで確認した際も

アッパーレベルをはるかに超えて、上限より2㎝ほど上まで油面が来ていました。

これをやってしまうと、クランクが油面を叩いてオイルスプラッシュが起きてしまい

クランケースの内圧が急上昇して、最悪オイルハンマー現象となります。

オイルハンマー現象に関しては、各自でググってください。

 

今回メタルが抱き合ってしまった原因の一つは

このオイル過多によるオイルハンマー現象も関係していると思います。

 

なのでFA20エンジンの場合、オイルは少なすぎてもいけませんし

多すぎてもNGなんです。

 

 

こんな感じでFA20には色々と突っ込みどころが多数あります。

リビルトする際にはこうした要所要所を抑えて組み上げることで

より耐久性の高いエンジンにする事が出来ます。

 

今回のように完全に壊れてしまってから修理をしようとすると

再利用できないパーツがほとんどになってしまいます。

メタルが無くなった事で、コンロッドは既定の量以上に上側に飛び出すので

ピストンがヘッドの燃焼室にブチ当たり

ピストンもヘッドも再利用不可・・・です。

 

なので最初の話に戻るのですが

エンジンを切った直後やかけた瞬間に

「タンタン・・・」

と言う音を聞くようになったらなるべく早くOHすれば

再利用できるパーツも多く、結果費用を抑えることが可能になります。

 

暖気後、音は小音量でも

「タタタタタタっ}

と音がしている場合も同じです。

 

「少し前から鳴るようになって

 気にはなっているのですが、まあ普通に走るし・・・」

と思っていると、ある日突然

「カンカンカンカン」

と言う音に変わり、エンジンはお亡くなりになります。