オイル交換の時期はどれくらいが良いの? 不定期連載 雑学コラム

最近の欧州車はエンジンオイル交換しなくて良いらしいよ!

オイル交換が要らないなんて すごいよね!!

2010年を超えたあたりで、こんな噂が流れましたね。

 

正確な情報ではないにしてもBMWを始め複数のメーカーが

エンジンオイルの無交換を提唱していたのは事実です。

(交換では無く、減った分を継ぎ足すと言う考えでしたね。)

 

結果として2010年前後のBMWやメルセデスの一部等は

中古車相場で、タダ同然のような扱いを受けています。

オイル交換をされなかったクルマとして認識され

確実に壊れるクルマとして判断されているからです。

 

エンジンオイルを始めとして、オイルは交換を必要とするものです。

使い始めた瞬間から劣化が始まりますので

交換しなくて良いと言う事は絶対に有りません。

ただ、諸事情により、交換したいけど出来ないと言うパターンは有ります。

 

今日はオイル交換と言う、クルマのメンテナンスの王道について

メンテナンスをする側の意見をお伝えしますので参考にして下さい。

 

 

エンジンオイルの交換時期はどれくらいがベストなの?

距離で判断する場合は3000㎞~5000㎞で交換して欲しいです。

期間で言うと3か月~6か月に1度は交換して下さい。

2つの条件のどちらか多い方を過ぎたら交換の目安と覚えておくと良いと思います。

走行距離は500㎞しか走ってないけど前回のエンジンオイル交換から7か月経ってしまっている。

前回のエンジンオイル交換から2か月しか経ってないけど、6000㎞走ってしまっている。

上の2つのパターンはいずれも要エンジンオイル交換車両です。

 

え?ディーラーでは10000㎞前後の交換で十分って言われたけど・・・。

そうですね。

ディーラーではよく10000㎞でエンジンオイル交換と言いますね。

 

ここで

メンテナンスをする側の意見

と言う言葉を使ったのを思い出して下さい。

それは、違う側の意見もあるからです。

クルマを販売する側の意見です。

 

すべての自動車ディーラーを十把一絡げに扱う気は毛頭ありませんし

メーカー側の意向に反してでも、ユーザー目線でメンテナンスを行うディーラーも多々あります。

しかし一般的に自動車ディーラーと言うのは、クルマを売る場所であって

クルマを治すところではないのです。

ここまで読んで、今までのディーラーさんの対応で、思い当たる節が浮かんだのであれば

そのディーラーさんは、あくまで売る側の意見を言っている事になりますね。

 

とあるZN6 86ユーザーさんと某ディーラーマンとのやり取り

ユーザー 「最近エンジン始動時にタンタンって言う音がするんだけど見てくれる?」

ディーラー 「わかりました。」

・・・点検中・・・

ディーラー 「どうもエンジンのメタルが焼き付きかけてるみたいですね。直そうとするとエンジン載せ替えで工賃含めて140万ほどになります。」

ユーザー 「え~ 140万・・・?」

ディーラー 「そうですね修理するとその価格なんですが、ちょうど今、新しいGR86が発表されまして〇〇様にはいつもお世話になっているので、今ならこの86を高値で下取させて頂いた上で新しいGR86にお乗り換えされてはいかがでしょうか?」

ユーザー 「140万掛けて直すよりも、乗り換えちゃった方がお得かもね・・・。」

このユーザーはディーラーが勧めるオイルを10000㎞ごとに交換していたそうです。

 

良くも悪くも、ディーラーの営業マンとしては、一般的な対応だと思います。

下取した86にはくっそ固いエンジンオイル入れれば

しばらくの間はエンジンの異音も出なくなるので

その間にオートオークションに売り飛ばし

クレーム申請期間さえクリア出来れば、あとは知ったこっちゃね~よ。

みたいな。

 

こんな話すると、中古ZN6 86が売れなくなりますね。笑

でも、少なからず行われる こう言う会話とその後の流れ。

そう言った形で売りに出された86を買ってしまったユーザーも数名知っています。

 

憚らずに結論を言うと、自動車ディーラーはユーザーに対して

1台の自動車を愛し続け、ずっと乗り続けて欲しいとは思って無いんです。

故障や不具合をきっかけにクルマを乗り換えて欲しいと考えているので

そのきっかけが欲しいと言うのもまた事実なんです。

 

繰り返し言いますが、これは一般論で

すべてのディーラーマンがそう思っている訳では無いですよ。

少なくても自分が懇意にして頂いているディーラーの皆さんは

ユーザーの事を大切に考えて、それを裏付ける対応をしています。

 

まあ、逆に言うと、付き合いは有る物の懇意になっていないディーラーマンは・・・

これ以上は言わないようにします。

 

ここでまたメンテナンスする側に話を戻しますが

自分達メカニックは、基本的にクルマが壊れないように整備や点検を行います。

自社で行った作業の後にクルマが壊れてしまうと

それは会社の評判を落とす事になり、必然的にお客さんが減ってしまいます。

それが続けば、最悪、会社をたたまなければいけなくなってしまいます。

 

ユーザーの事を考えて!と言うキレイごとも必要ですが

きちんとした仕事をしないと、自分たちの飯が食えなくなるんです。

だから、クルマが壊れないように整備をする。

単純明快な理由がありますので

きれいごとだけを言っているのではない事はお判りいただけるかと。

 

そして、このクルマを壊さない!と言う絶対条件をクリアする為

エンジンオイル交換サイクルを提案すると

ディーラーの提案とは異なって来る事もお判りいただけると思います。

 

では、何故エンジンオイルは3000㎞~5000㎞

もしくは3か月~6か月以内に交換して欲しいのか?

それは、そもそもエンジンオイルに求められる役割に関係しています。

 

エンジンオイルの役割その① 潤滑

エンジン内の擦れる部分にエンジンオイルが入り込み

金属どうしが直接接触しないようにする事で摩耗を防ぎます。

 

エンジンオイルの役割その② 密閉

エンジン内部で爆発を起こし、その力を回転力に替えていますが

この爆発の力を余すことなく伝えるには、爆発力を密閉して駆動に変換しないといけません。

金属間どうしではこの密閉は無理なので、そこにエンジンオイルが入り込み密閉性を上げます。

 

エンジンオイルの役割その③ 防錆

エンジンには鉄やアルミ、車種によってはマグネシウムが使われています。

これらの金属は必ず表面が酸化して行きます。

酸化とは、いわゆる錆の発症です。

エンジンオイルで金属をコーティングすることで錆を防ぎます。

 

エンジンオイルの役割その④ 冷却

エンジンは内部で爆発が起きています。

爆発には高温が伴いますので、この熱をオイルに伝え

オイルが循環しながら熱を冷ます事でエンジンが一定の温度に保たれています。

 

エンジンオイルの役割その⑤ 洗浄

エンジン内部では様々な擦れや回転、打撃が行われており

それらの動きは金属の摩耗を進めてしまいます。

摩耗した際の金属粉はエンジンオイルに取り込まれて循環し

オイルフィルターでろ過されて、再びキレイになってエンジンに送り込まれます。

 

この5番目の役割、洗浄がエンジンオイル交換の時期を考えるうえで特に重要になります。

エンジンオイルによる洗浄は、オイルが自分の中に汚れを取り込んで行われます。

当然オイルが取り込める汚れのキャパには限界があるので

オイルフィルターで都度ろ過されますが

ろ過したとしても100%キレイになる訳ではありません。

それにオイルフィルターのキャパにも限界があります。

 

このエンジンオイルが汚れを取り込めるキャパが100%にならない様な距離が

3000㎞~5000㎞なんです。

オイルフィルターに関しては、エンジンオイル2回交換に対して1回、替えてあげて下さい。

 

期間に対して3か月~6か月で交換して欲しいのは

エンジンの中と言う密閉された空間の中に閉じ込められているからです。

単純な空気との密閉なら問題はありませんが

エンジン内部のクランクケースと呼ばれる部分には有毒ガスがあります。

このガスと常に接触させられることで、エンジンオイルはその性能をどんどん劣化させてしまいます。

距離が進んでおらず、エンジンオイルが汚れを取り込めるキャパに達していなくても

劣化が進む事でエンジンオイルの役割の主に①~③がうまく働かなくなります。

 

ここまでで主にエンジンオイルに関して書いて来ましたが

オイルはエンジンオイルだけではありません。

 

 

ミッションオイルの交換時期はどれくらいがベストなの?

ミッションオイルには大きく分けて

マニュアルトランスミッションオイル(M/Tオイル)

オートマチックフルード(ATF)

デュアルクラッチトランスミッションフルード(DCTF)

の3つが存在しますが、基本的な交換サイクルはおおよそ同じで

通常走行であれば2万キロ前後

サーキットやスポーツ走行をするのであれば

2万キロ以内に都度状況に応じてとなります。

 

ここで気を付けなければいけないのが

オートマチックフルードデュアルクラッチトランスミッションフルードです。

 

まずは国産車で多用される

トルクコンバーター式オートマチックトランスミッションですが

これも車両購入ディーラーからのお勧めで

「交換しなくても良いですよ」

と言われて、10万キロを突破する車両が多く見受けられます。

いざ変速ショック等が出始めて、慌てて交換しようと量販店等に駆け込むと

「距離が進んでいるので、交換が出来ません。」

と言われます。

 

その理由を説明しますと

まずは量販店等がオートマチックフルードを交換する機器に由縁があります。

 

一般的には油量を測るレベルゲージを抜き、そこにストローを挿し

バキュームでオートマチックフルードを吸い上げます。

吸い上げた量を見て、同じ量を注入しますが、注入先には何があると思いますか?

レベルゲージは油量を測るので、その先にはオイルパンがあります。

10万キロ以上オートマチックフルードを交換しなかったオイルパンの底部には

汚れやスラッジが大量に付着しています。

レベルゲージから勢いよく注入されたオートマチックフルードは

これらの汚れやスラッジを巻き上げながら入って行きます。

ストレーナーと呼ばれるオートマチックフルード吸い上げ部分には

茶こしのような目の粗いフィルターはありますが

舞い上がった汚れやスラッジを ろ過出来るような代物ではありません。

 

それらの汚れはバルブボディーと呼ばれる部位に圧送され

髪の毛より細いような油路を通って行きます。

詰まれば、即、アウトです。

 

なので、交換が出来ないんです。

作業的には出来るのですが、作業後にオートマチックトランスミッションが

壊れてしまうリスクが多大にあるので、交換したくない。と言うのが正しいですね。

 

こう、ならない為にも2万キロ前後で定期的にオートマチックフルードを交換して置くと

オイルパンはきれいな状態が保てます。

もし距離が進んでしまっていて、どうしても交換したいと言う場合は

当店の過走行車のATF交換できます!と言う記事をご覧ください。

 

続いてハイリスクなのが、欧州車に採用された

デュアルクラッチトランスミッション搭載車の過走行車両です。

特に乾式と呼ばれるVWやAUDIに採用された7速のデュアルクラッチトランスミッションは

フルードの交換でほぼ壊れます。

当店では、申し訳ありませんが上記車両のデュアルクラッチトランスミッションフルードの交換は行いません。

不具合が出ているのであれば、新品ミッションへの交換をお勧めします。

デュアルクラッチトランスミッションフルードの交換では万が一にも直りません。

 

湿式と呼ばれるタイプの6速や7速のデュアルクラッチトランスミッションは

当店でもかなりの数のデュアルクラッチトランスミッションフルード交換を手掛けています。

ただし、フルードだけを交換すると不具合が出る可能性が高く

フィルターも一緒に交換し診断機を使いながら、指定温度での適正量を厳守する必要があります。

それらの手間を考えると、決して安くはない費用となります。

っが交換せずに放って置くと、最後はデュアルクラッチトランスミッションが変速しなくなると言う末路に辿り着きます。

 

国産車でのデュアルクラッチトランスミッションと言うと

三菱のCZ4A ランエボXやR35 GTRが有名ですね。

これらの車種も2万キロを目安に交換すると良いと思います。

 

オートマチックフルードやデュアルクラッチトランスミッションフルードではない

いわゆる普通のミッションオイルも、基本は2万キロを目安に交換すると良いと思います。

ただ、FFや4WD車両でLSDが内蔵されている車両は、そうではないミッションに比べ

ミッションオイルへの負荷が高くなります。

サーキット走行やスポーツ走行をした際は早めに交換してあげて下さい。

 

LSDと言う言葉が出てきたので、最後にデファレンシャルオイルのお話です。

LSDとはリミテッド スリップ デファレンシャルの略で

作動制限を施したデファレンシャルの事を表します。

一般的なデファレンシャルギアとは比べ物にならない様な負荷が

デファレンシャルオイルに掛るのがLSD装着車両です。

一般的にはデフオイルと呼ばれるこのオイル

デフオイルの交換時期はどれくらいがベストなの?

単純なデファレンシャルの場合はミッションオイルと同じで2万キロ前後

LSDを装着したデファレンシャルの場合は走行状況に応じて

5000㎞~10000㎞もしくはLSD効果が薄れてきたら交換です。

 

デフオイルの特徴として、容量が少ない割に高温高負荷で酷使される事が多く

その場合、すぐに劣化してしまいます。

走行会等でクルマを酷使した場合は、その都度交換した方が良いくらいですね。

 

 

まとめ

たかがオイル交換、されどオイル交換

この言葉がこれほど当てはまるのも珍しいほど

忘れられやすいオイル交換がもたらすクルマへのコンディション悪化は重大です。

 

個人的には安いオイルで頻度を上げて交換するのも

ハイブランドのオイルを長期間使うのも、いずれも良くないと考えます。

 

汚れた手を洗う。

と言う場面を想像して見て下さい。

ほとんど汚れの落ちない石鹸で頻繁に洗ったとしても

そもそも汚れが落ちないので、頻繁に洗うこと自体に意味がありません。

逆にものすごく汚れの落ちる石鹸を使うにしても

1週間に1回しか手を洗わないとなると、どうでしょう?

清潔さを保てるのは、洗った後の数時間だけで、あとは洗っていないのと同じです。

 

安いオイルにはそれなりの理由があります。

ベールオイルとして格安品を使わざるを得ないので混ぜ込む添加剤で

基準値の辻褄を合わせています。

しかし添加剤の量が多すぎる故に、ベースオイルの洗浄力のキャパが落ちてしまいます。

汚れの落ちない石鹸と同じですね。

 

ベースオイルにきちんとした物を使うハイブランドのオイルでも

洗浄力のキャパを越えて、長期間使い続ける事にはリスクしかありません。

 

適正なオイルを適正な交換サイクルで交換する。

これに尽きると思います。

 

当店では多数のオイルを在庫として用意しておりますので

お気軽にお問い合わせ下さい。