人はなぜ剥き出しエアクリーナーを買うのか?メーカーはなぜ剥き出しエアクリーナーを売るのか?その2

先日は

メーカーはなぜ剥き出しエアクリーナーを売るのか?

と言う質問提起で終わりましたが

今日はその続きです。

 

メーカーさんも剥き出しエアクリーナーを使った車種別キットを造れば

車種によっては弊害のが多い事は分かってると思います。

分かっていなければ、十分なテストを行っていない事を意味します。

じゃあ、分かってるのになぜ売るのか・・・。

 

それは、出せば買う人が居るからではないでしょうか?

はぁ?って思うかもしれませんね。

昨日のブログでは、買う側の理由としてメーカーが売るから・・・と書きました。

一瞬、矛盾してるのでは?と思うかもしれませんが

この需要と供給のインフィニティ―、80年代から永遠とグルグル回っていると思うんです。

 

どちらかが、や~めた!ってなれば、もう片方も止まると思うのですが

どちらも止まらないので無限ループが30年以上に渡って続いているんだと。

 

その昔、EFI(電子制御燃料噴射)が出始めたころのエアフロには複数の種類がありました。

フラップ式やカルマン式、そして日産が多く用いたホットワイヤー式。

 

エアフロを使わずに圧力センサーだけで制御するDジェトロ車も多く

1990年代のトヨタ車、今でもホンダ車の一部やダイハツ車の一部はDジェトロで動いています。

このDジェトロ車に剥き出し系のエアクリーナーを装着しても

大したデメリットは発生しにくいと思います。

 

Dジェトロの制御の肝となる圧力は、大抵の場合サージタンクで測り

サージタンクからエンジン内部までは目と鼻の先です。

制御の根幹となる圧力をサージタンクで診る以上

それより前にある物の影響はすでにサージタンクに表れています。

例えエアクリーナーを効率の良い物に替えて、流速や空気流量が変わったとしても

変わった後のサージタンク圧力を診るので、問題は起こらないって言う理屈です。

 

しかしエアフロって、どこに付きますか?

昨日、登場したケータハムを例に出すと、赤枠の部分。

エアクリーナーの直下に着くことがほとんどです。

 

このエアフロ以降には、長~いサクションパイプが有り

タービンを通ってターボパイプを通りインタークーラーへ。

インタークーラー通過後もさらなるターボパイプを通り

スロットル通過してようやくサージタンクへ・・・。

 

エアフロが測定した空気量が

実際のエンジンに入り込むまでにはかなりのタイムラグがあり

これがエアフロ車のレスポンスが悪い原因とも言えます。

 

なので、この間の事も加味してECU内にはマップが構築され

エアフロが何Vを出した時に、流入空気量は何g/sだと言う相関をMAFマップと言う物で算出します。

エアクリーナーの効率が変わり、エアフロを通過する際に変化が出れば

それはエアフロから出力される信号に表れてしまいます。

MAFマップで算出された流入空気量と実際の流入空気量に差が出れば

空燃比が薄くなったり、濃くなったり

点火時期が進んだり、遅れたりと、制御の根本がズレてしまいます。

 

アフターパーツのエアクリーナーに求められる、最大にして基本的な性能

それは純正エアフロの出力値が変わらない事!

これが一番大事なんです。吸気抵抗なんて2の次です。

 

ですが、各メーカーが保有している

エアクリーナーそのものは、すでに形が決まっていて

エアクリーナー単体で診た場合の構造も単一化されてます。

この出来上がってしまっているエアクリーナーを装着させるため

車種ごとのエアフロアダプターを製作して

 

エンジンルームに

収めて行くのですが

果たして、単一化されたエアクリーナーを通過する流速パターンを

単純なエアフロアダプターのみで、純正値と同じに出来るのでしょうか?

 

当店でお勧めする事のあるイギリスのEVENTURI

非常に高価な流速解析ソフトや

フローベンチを使い

如何に純正エアフロ通過時の値が狂わないようにするかに最新の注意を払います。

その上で吸気効率を高めてパワーを出す為に何が要るかを考え

必要であればエアクリーナーそのものを新規製作します。

 

出来上がったエアクリーナーを売るためのKITではなく

エアインテークシステム全体として設計を行う。

さすがは航空機の部品制作をメインの仕事としているだけの事はあります。

エアクリーナーKITではなくインテークシステムと呼ぶにふさわしい商品です。

 

もちろん剥き出しエアクリーナーKITすべてがNGと言うわけではありません。

MAFマップを細かくセッティング出来るECUチューンと同時に装着したり

先に述べたDジェトロ制御の車両とは相性が良かったりもします。

 

問いたいのは

剥き出しのエアクリーナーを付ける事そのものが目的になっていないか?

と言う点です。

 

とある目的のために剥き出しのエアクリーナーを選択するのではなく

剥き出しエアクリーナーを装着する事自体が目的になってしまっていては本末転倒です。

 

この点がしっかり把握出来ていれば

デメリットも多く、メリットがほとんど見当たらない車種別KITを売る理由

そして買う理由が無くなります。

どうしようもない無限ループから抜け出せるのでは?

 

 

完成度の高いチューニングカーを見ると、そのほとんどが海外製のパーツでまとめられていたり

壊れないエンジンをバラすと、主要パーツはすべて海外部品と言う事が多々あります。

 

いわゆるチューニングと言うお家芸を自ら放棄してしまったのが

今の日本のカーアフターパーツを取り囲む現実だと思います。

 

今回は剥き出し系のエアクリーナーに話を絞って記事を書きましたが

そもそもニッチでディープな世界がチューニング業界だと思います。

本当に良い物を、理解できる人に供給する

これが海外製品に見られる、本来のあるべき姿だと思います。

 

良い物を売り、悪い物は売らない、そしてダメな物が付いていれば外す。

ここまでの事が出来る、信用に足るお店になりたいと考えています。