DJ5FS デミオ DPF再生サイクル異常に対する考察

最近は暇さえあれば、DPF再生に関する文献や

過去に試された触媒の種類、各メーカーのDPFに対する考え方を調べています。

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最近一般的な尿素を媒体としたものから

少し前にヨーロッパで流行ったセリウムを媒体としたDPF再生など

色んな方法があるんですね。

 

マツダがSKYアクティブで採用しているのは、媒体は使わずに燃焼温度を上げて焼き捨ててしまう方法です。

アテンザやCX-5とデミオではEGRのレイアウトが違うようで

煤の溜まり方は若干異なるようですが、定期的に高温で焼き捨てると言う考えは同じの様です。

新車解説書等もかなり読み漁りましたので

みんなが一般的にスロットルと呼んでいる物は、

実はスロットルではなくインテークシャッターバルブでその役目はスロットルとは全く違う事

インタークーラーは水冷で、一部の人が言っていたインタークーラーレスは嘘だった事

マフラーについているEXシャッターバルブはDPF再生だけではなく

LP-EGRやHP-EGRで積極的に使われている事等々

再認識する必要のある内容も多く、たまには座学も楽しいなと思いました。

 

さて、本題のDPF再生サイクル異常

当初はブーストアップデーターが主な原因かと思っていましたが

ノーマルデーター車両でも頻発する事

ブーストアップ車両でもDPF再生サイクルが正常なクルマも多い事を見ると

ECUデーターがどうのこうのと言う問題ではないと思います。

もちろん、ブーストアップした分A/Fを合わせるため、基本燃料噴射を増量する部分はありますので

ブーストアップ車両の方がノーマル車両より若干DPFサイクルが短くなることは十分あり得ます。

ただし、その差は数パーセント・・・

250~300kmに一度DPF再生だった車両が

50kmに一度再生するようになった原因のすべてがそこにあるとは考えられません。

 

新車解説書にはDPFの再生について

・PCM(ECUの事です。マツダはECUの事をパワーコントロールモジュールと呼び、略してPCMです。)は

 DPFに堆積したPM量を推定しています。

・PM堆積量は、排気差圧、PM排出量から算出しています。

 

排気差圧による推定

・排気圧センサからの信号を基に、DPF前後の排気圧を比較することでPM堆積量を推定しています。

 

・PM排出量は、煤発生量およびPM燃焼量から算出しています。

煤発生量

・エンジン回転数、吸入空気量、および燃料噴射量を基に、煤発生量を推定しています。

PM燃焼量

・排気音センサからの信号を基に、PM燃焼量を推定しています。

 

PCMは、PM堆積量に応じてDPF表示灯、エンジン警告灯を点灯/点滅させ、DPF再生の実施を促します。

と説明しています。

 

煤の発生量はエンジン回転数、吸入空気量、および燃料噴射量を基に、推定と言う事は

燃料噴射量が多くなれば、煤の発生推定量も増えると判断していると思われます。

 

この説明を基準にすると

ブーストアップ車両の方がノーマル車両よりDPF再生サイクルが短くなることは納得できます。

っが、ブーストアップしていないノーマル車両でも、DPF再生サイクルが極端に短くなる理由は何なのか・・・

 

実際にリコール対策後のECUデーターをインストールしても

一向にDPFの再生サイクルが伸びなかった車両は何台もあります。

当店のデモカーもリコール後のデーターは全く役に立ちませんでした。

 

っと言う事は、やはり根本的な原因はECUのデーターでは無いと言えます。

 

じゃあ、何が原因・・・?

 

整備書を見ていると、燃料噴射学習なるものが載っています。

この学習はある程度は常に自動で行われているようですが、

1年に1度ほどディーラーで強制的に学習する事が進められていました。

 

診断機をつなげると、1番~4番までのインジェクター学習値と言う物を見ることが出来ます。

DPF再生サイクルが極端に短くなっている車両を観察すると

この学習値がやたらと大きな数字になっています。

 

ここからは推測です。

 

インジェクターに不良がある、もしくはインジェクター先端に煤が堆積して

ECUが命令する規定の噴射量では、目標のA/Fに達していない場合

この燃料噴射学習はどの様に変化して行くか・・・?

それがもし、基本燃料噴射にプラスされた追加噴射としてECUデーターに積算されるとすると

煤の発生量はエンジン回転数、吸入空気量、および燃料噴射量を基に、推定されるので

煤の発生量としては学習値分多く推定されているのではないかと・・・

 

そこで、DPF再生が極端に短かったデモカーのインジェクターを変えてみました。

今まで長くても50kmに1回はDPF再生に突入していたのが

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50kmを超えてもPMの堆積量があまり増えていません。

赤丸が3つ付けてありますが、左の赤丸が前回のDPF再生からの走行距離

下段左側の数値はDPF内の予想PM堆積値で、この数値が6~7g/Lになると自動再生が働きます。

下段右側は現状の予想PM排出量です。

以前は

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前回のDPF再生から50.8km走行した段階で、PMの堆積量は6.2g/LでPM排出量は1.4g/Lでした。

この後すぐにDPF再生に突入しました。

インジェクター交換により、PM堆積量と排出量が極端に下がっていることが分かります。

燃料学習値を見てみると・・・なるほど!と言う数字でした。

 

ディーラーに入庫して返ってきたら、やたらとDPF再生サイクルが短くなっていたというデミオ、ありませんか?

おそらくディーラーにて、強制的に燃料学習が実行され

いままでの学習値よりもはるかに多い学習値が上書きされたんだと思われます。

残念ながら、この学習値を手動で少ない数字にする事は出来ません・・・

インジェクターを正常品に替えて、その上で再度燃料学習をする必要があります。

 

これらの観察から、DPFの再生サイクル異常は

それぞれの理由でインジェクターそのものの噴射量が少なくなってしまった時に

(もともとのインジェクター不良、インジェクター噴射部分へのPM堆積等)

目標A/Fに届かせようとさせる燃料噴射学習により、トータルでの燃料噴射時間が増え

その積算値から計算される予想PM発生量も増加してしまい

PM堆積量がすぐに規定値になってしまう為、DPF再生に入ってしまう。

っと、予想されます。

 

ちなみに、今朝

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最終DPF再生後80km近くになりましたが、PM堆積量は2.2g/Lです。

比率演算すると、堆積量6g/Lを超えるには220kmぐらいの走行には耐えてくれそうです。

 

原因が予想出来れば、対策も検討出来ます。

ひとまず1回目のDPF再生が実行されるまでデーターを取得し、

その後、現在検討中の対策を施してテストしてみたいと思います。

 

リコール後のブーストアップデーターを待ちわびているオーナーの皆さんや

DPF再生異常でお困りのオーナーの皆さん

対策完成まで今しばらくお待ちください。

 

長文のご拝読、ありがとうございました。